会長3期目のご挨拶
会長3期目のご挨拶
”Acumoxology”, “Acumoxologist”の提唱
会員各位
先の第73回全日本鍼灸学会学術大会(宮城)における通常総会で会長に再任いただきました。1期、2期における以下の事業を継続し、将来の日本鍼灸の発展に繋がるよう努めてまいります。
1.認定鍼灸師
2022年に研修を開始した専攻鍼灸師が2024年で必要な研修期間を終了し、今年度末に筆記試験と口頭試問を受験予定です。来春には新制度における認定鍼灸師の第1号を迎えることになります。
2.鍼灸学用語集
鍼灸学用語集についてはWeb版とする予定です。それと平行して用語の英語化、用語の定義作成の作業を継続中です。途中経過は逐次報告いたします。
3.鍼灸電子カルテ
来るべき鍼灸電子カルテ時代を見据えて、標準的なカルテの項目の整理を行っています。鍼灸電子カルテベンダー各位の協力も得ながら作業を進めてまいります。
4.専門医連携推進委員会
認定鍼灸師の上位資格として「専門鍼灸師」の設置を検討しています。そのためにはまず医学系各専門学会との連携が必要と考え、「専門医連携推進委員会」を新たに立ち上げました。まずは、本委員会と認定委員会で将来の「専門鍼灸師」像を明らかにしてまいります。
以上、会員の皆様には、なお一層のご理解とご支援を賜りますようお願いいたします。
さて、後半は、”Acumoxology”と”Acumoxologist”という用語の提唱です。
Acumoxologyは聞き慣れない用語ですが、2000年代はじめに中国で使われています1)。この書籍では、中国語としては「針灸」ですが、その英訳としてAcumoxologyが用いられています。Acumoxologyは、それ以降も事典に記載されていたり2)、世界鍼灸学会連合会(WFAS)の教科書3)にも用いられたりしています。私自身も2021年8月に本会英文webで日本鍼灸を紹介する際の前書きのところで、“academic acupuncture and moxibustion (acumoxology) ”という形でこの用語を初めて用いました4)。意図するところはやはり学問としての鍼灸です。日本語に訳せば「鍼灸学」となります。
一方、Acumoxologistはさらに聞き慣れない用語ではないかと思います。鍼灸師あるいは鍼灸治療家に対応する用語は、acupuncturist/moxibustionistやacupuncture and moxibustion practitioner、あるいはacupuncture and moxibustion therapistなどありますが、これらからは施術者としての鍼灸師は想像できても学問としての鍼灸を追求する者の名称にはなっていないと思います。その点、acumoxologistは、鍼灸のスペシャリストとして学問を修め、さらにそれを踏まえて治療を実践するという2つの意味が含まれると思います。いかがでしょうか?
この場を借りてこの2つの用語を提唱させていただきたいと思います。ご意見があれば何なりと学会本部までお寄せください。どうぞよろしくお願いいたします。
文献
1) 赵京生. 针灸经典理论阐释, 上海中医葯大学出版社. 2003 (Zhao Jingsheng. Elucidation for Classical Theory of the Acumoxology)
2) Ma, Yun-tao. Acupuncture. In: Helaine Selin ed. Encyclopaedia of the History of Science, Technology, and Medicine in Non-Western
Cultures. Springcr-Vcrtag Berlin Heidelberg New York 2008, 15-19.
3) Deng Liangyue. The Course of International Acumoxology. Questrush Press (鄧良月.国際鍼灸学教程. 華夏出版社) 2009.
4) https://jsam.jp/en/news_en/2021-japan-booklet/
2024年8月1日
公益社団法人全日本鍼灸学会
会長 若山育郎