会長再任のご挨拶
会長再任のご挨拶
これからの日本鍼灸のあり方

2022年6月4日に開催された通常総会にて会長に再任いただきました。一期目に策定した事業計画を向後2年間でできるだけ進めて参りたいと考えております。
さて、漢方(ここでは湯液)と中医学の違いについては、湯液の世界ではよく論じられ、また解説されています。日本東洋医学会の伊藤隆会長によると、漢方の特徴は、①西洋医学を学んだ医師が処方している、②処方単位で使用している、③処方単位で使用することで治療効果の再現性が担保でき、副作用の調査も容易にできるとのことです1)。
それでは日本鍼灸の特徴は何でしょうか?日本には、大まかにいうと現代派、古典派、現代・古典折衷派、中医派などがありますが、それぞれがさらに分かれていて極めて多様な流派があります。しかも、それらは統合されずに独自の方法で教育し後代に伝えられています。これから先も日本鍼灸の特徴はその多様性にあるということで良いでしょうか?私は、世界から日本鍼灸の特徴を聞かれた時に示すことのできる一貫したものが是非とも必要ではないかと考えています。また、それを構築するのが学会の使命です。
学会では、現在日本東洋医学サミット会議(JLOM)加盟の鍼灸6団体とともに日本のすべての鍼灸師が使うことのできる施術録の共通プラットフォーム策定を進めています。現在は流派によってそれぞれ独自の施術録が用いられていると思いますが、それらを統合できるものを策定しようということです。これにより鍼灸臨床において、①適正な問診と記録、②現代医学的所見並びに望診・聞診・切診所見、経絡病証などの東洋医学的所見とその記録、③得られた所見に応じた現代医学的な観点による治療あるいは古典に基づいた治療などについての詳細な記録が日常的な作業となると考えられます。すなわち、共通の施術録を使用することにより、多様さを超えてそれらを統合した、また、できる限り多くの所見に基づき人間全体をみて治療する方法が確立されてくると考えています。
このほかにも、新しい認定鍼灸師制度、学会主導の鍼灸学用語の整備などを同時に進めています。これらの事業は一朝一夕で完成するものではなく、何年もの時間を要すると考えますが、地道な活動を通じて少しずつ進めて行きたいと考えています。会員の皆様には、なお一層のご理解とご支援を賜りますようお願いいたします。
文献
1) 伊藤隆.巻頭言 第1回漢方医学国際シンポジウム(日本東洋医学会主催)の意義.漢方の臨床.2022; 69(6): 11-12.
2022年7月6日
(公社)全日本鍼灸学会
会長 若山 育郎