新認定制度の概要

1.新認定制度について

(公社)全日本鍼灸学会(以下、本会)認定制度は、本会々員の鍼灸学に関する学術並びに資質の向上を生涯にわたって図ることを目的として、1999年(平成11年)に開始され現在に至っている。この間、鍼灸を取り巻く環境や国民の意識は大きく変化してきた。本会では、こうした社会の変化を受けて、本制度も国民のためのより良い認定制度となるために改革する必要があると考え、2014年(平成26年)度に認定実務委員会、2015年(平成27年)度からは認定制度改革検討委員会を設けて改革を検討し、2019年6月より新認定制度を施行している。

新認定制度の要点は次の3つある。まず、鍼灸師自身が専門職として社会に貢献するためプロフェッショナリズムを身につけるという点である。社会は、職業人に対して専門職として備えている情報を開示するとともに、より高い倫理観を持つよう求めている。我々は、専門職業人として自ら学術の研鑽と資質向上に努める姿勢を社会に対して示さねばならない。 次に、医療機関との連携である。鍼灸が社会資源となり医療の一部として機能するためには、医療機関との連携が不可欠である。近年、他の職種との連携の必要性が訴えられていますが、連携には最新の知識や技能の修得が必要になってきている。医療機関との連携を可能にするための研鑽と資質向上を達成し、他の職種からも認められる認定制度を目指す。 三つ目は、国民のための認定制度を目指すことである。今、国民は鍼灸に安心と安全を求めている。国民が安心して治療を委ねることができる鍼灸師の基準を設け、安全性の高い施術と標準的な一定レベルの学術水準を担保することは喫緊の課題である。将来的にはそれを国民に示すため、広告が可能になるような認定制度を目指す。 上記を達成するため、本会では、認定制度について下記のような概要をまとめ施行している。

2.認定制度の概要

認定制度は、認定鍼灸師制度と専門鍼灸師制度の2段階制とする。

3.認定鍼灸師制度の概要

(1)目的

  1. 安全で標準的な鍼灸治療を提供でき、医療機関と連携が行える、国民から信頼される鍼灸師の育成と認定を行う。
  2. 鍼灸師が修得すべき知識・技能・態度を明確にし、それらに則って教育・評価することにより、鍼灸師の質を担保する。

(2)名称

この制度により認められた者を「認定鍼灸師」と呼ぶ。

(3)対象

本会会員で、はり師、きゅう師資格を共に有する者を対象とする。

(4)到達目標

鍼灸臨床で一般に遭遇する疾患・症状に適切に対応できる、基本的かつ標準的な知識・技能・態度を修得する。加えて、以下の要件を満たす。

  1. 療面接が実践できる。
  2. 鍼灸治療の適・不適に係る現代医学的な病態把握ができる。
  3. 治療効果と副作用の説明ができる。
  4. リスク管理が実践できる。
  5. 施術者としての倫理を理解し、適切な態度で患者に接することができる。
  6. 消毒、清潔・不潔の概念を理解し実践できる。
  7. 安全で適切な治療ができる。
  8. 診察結果や治療内容の説明ができる。
  9. 医師との連携が実践できる。
  10. 診療に関する最新情報の収集ができる。

(5)研修

研修を希望する者は、研修を開始する前に認定委員会事務局に登録しなければならない。
研修を始めるために登録を行った者を「専攻鍼灸師」と呼ぶ。

  1. 臨床研修
    1. 臨床研修は専攻鍼灸師登録後3年以上行う。
    2. 学会が認定した指定研修施設において、指導鍼灸師の下で720時間以上の臨床研修を行う。
    3. 臨床研修期間中に、自身で治療し鍼灸が奏功した症例を40例以上経験する。
    4. 指定研修施設では、到達目標を示した研修カリキュラムに沿った臨床研修を行う。
  2. 学術研修
    上記(5)-1)-③で経験した症例について、
    1. 40例の症例リストを所定の様式を用いて作成する。
    2. 全日本鍼灸学会雑誌「症例報告の書き方※1」に準ずる2例の症例報告(詳細な症例報告)と、本会学術大会「抄録作成のポイント※2」に準ずる10症例のabstract(簡略な症例報告)を作成する。
      ※1 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjsam1981/52/4/52_4_446/_pdf
      ※2 http://spare.jsam.jp/pdflib/syouroku.pdf
    3. 臨床研修期間中に、本会学術大会、支部学術集会、あるいは本会以外の指定学会(関連学会学術大会)で2回以上筆頭演者として発表する。なお、発表内容は上記①②の症例と重複しても構わない。
    4. 別に定める配点表に従い、本会学術大会、支部学術集会などに出席し、必要単位(点数)を取得する。
    5. 認定鍼灸師に「求められる技能」について、カリキュラムに基づく下記(表1)のe-learningを全て受講し、単位(点数)を取得する。

(6)認定鍼灸師の受験要件

  1. 我が国のはり師、きゅう師資格を共に有する者で、本会会員となった上で、上記(5)-1)、(5)-2)を充足すること。
  2. 発表した学術大会や支部集会、指定学会の抄録のコピーを提出すること。

(7)認定試験

認定試験は、認定委員会の認定試験部門が毎年1回実施する。

  1. 1次審査
    1. 書類審査(学術研修の受講記録などが受験要件を満たしているかの確認)
    2. 臨床研修評価表(自己評価・指導鍼灸師の評価)の審査
    3. 症例リスト、abstract、症例報告の審査
  2. 2次審査
    1. 筆記試験(マークシート式問題)
    2. 提出した症例に関する口頭試問(倫理面、態度などの認定鍼灸師としての適格性審査を含む)

(8)認定鍼灸師の認定

認定委員会の審査を経て、理事会で承認し、会長が認定する。

(9)認定鍼灸師の更新

  1. 認定鍼灸師の認定期間は5年間とする。
  2. 更新を希望する場合は、以下の要件を満たさねばならない。
    1. 別に定める配点表に従い、本会学術大会、支部学術集会、認定指定講習会、e-learningなどを受講し5年間に必要単位(点数)※3を取得する。
    2. 本会学術大会・支部学術集会などでの1回以上筆頭演者として発表する、症例報告※4を提出する、査読のある学術雑誌1編以上の論文が掲載される、のいずれかを満たす。
      ※3 鍼灸に関わる医療倫理(個人情報保護を含む)、医療安全、利益相反(COI)などは必修とする。
      ※4 Abstract(10症例)または症例報告(自身が治療した1症例)のいずれかとする。
    3. 認定鍼灸師更新申請書を認定委員会に提出する。

(10)現行制度における認定者の移行措置

  1. 現行制度における認定者は、移行時に「認定鍼灸師」の資格を付与される。ただし、鍼灸師以外の者は、「学術認定者」として登録される。
  2. 新制度を開始してから5年間は移行期とし、認定鍼灸師の更新時期は現行制度の期間を引き継ぐ。
  3. 移行期の更新に必要な単位(点数)は、旧制度と新制度のいずれかの基準を選択できる。
  4. 移行期間においては、地方において近隣に臨床研修施設が無い場合については、今後救済措置を考慮していく。

(11)費用

  1. 指定研修施設での研修費用については、各施設の基準による。
  2. 認定試験受験料は5千円、認定鍼灸師登録料は3万円とする。また、更新審査料は5千円、更新料は1万円とする。
  3. 移行期は、旧制度、新制度に関わらず上記2)の更新審査料・更新料を適用する。

(12)指定研修施設の指導者について

  1. 指定研修施設※6の要件
    以下の要件を全て備え、研修カリキュラムに従った教育が可能で、専攻鍼灸師の臨床研修に必要な一定の鍼灸治療症例を有し、医師と連携している施設を指定する。
    ※6 指定研修施設での研修費用については、認定委員会へ報告する。
    1. 医師紹介状等を介して患者情報を共有している施設
    2. 患者について医師から指導が受けることができる施設
    3. 指導鍼灸師が鍼灸臨床を行っている施設
  2. 指定研修施設の認定
    認定委員会の審査を経て、理事会で承認し、会長が認定する。

(13)指定研修施設について

  1. 指導者の要件
    1. 以下の条件に該当する者を「指導鍼灸師」と呼ぶ。
      1. 認定鍼灸師の資格を有し、 1回以上の認定の更新を行い、指導者講習会を受講した者で、指定研修施設を経営もしくは同施設に所属し、日常的に鍼灸治療を実践している者。
        (指導鍼灸師が指定研修施設を離れた場合は、指導鍼灸師としての効力が失われる。但し、新たな所属先において専攻鍼灸師を指導する場合は、指定研修施設、指導鍼灸師それぞれについて再度申請せねばならない。)
      2. その他、認定委員会が認めた者。
  2. 指導鍼灸師の認定※5
    上記1)の要件を満たす者の申請を受けて、認定委員会で審査を行い、理事会で承認し、会長が認定する。
    ※5 移行期における指導鍼灸師の認定に関して指定研修施設ではり師・きゅう師資格を共に有し、日常的に鍼灸治療を実践している本会会員で、申請により会長が認めた者は、指導者講習会を受講することにより、指導鍼灸師の資格を付与する。
  3. 指導鍼灸師の更新
    1. 指導鍼灸師の委嘱期間は5年とする。
    2. 更新を希望する場合は、指導鍼灸師更新申請書を認定委員会に提出する。
  4. 指導鍼灸師の義務
    1. 研修カリキュラムに則り指定研修施設において専攻鍼灸師を指導する。
    2. 指導鍼灸師は、毎年専攻鍼灸師の指導報告書を提出せねばならない。
    3. 指導鍼灸師は指導者講習会を毎年受講せねばならない。

4.専門鍼灸師制度の概要

(1)目的

  1. 専門領域において医療機関と連携ができ、より専門的な鍼灸治療を提供できる鍼灸師の認定を行う。
  2. 専門鍼灸師が修得すべき知識・技能・態度を明確にし、それらに則って評価することにより、専門鍼灸師の質を担保する。
  3. この制度では、専門鍼灸師の専門領域を国民に明らかにするため、その名称の広告ができることを目指す。

(2)名称

この制度により認められた者を「専門鍼灸師」と呼ぶ。さらにそれぞれの専門領域の名称については、専門領域を踏まえた名称※7とする。
※7 個々の名称については、理事会で決定する。

(3)対象

「認定鍼灸師」の資格を有する者を対象とする。

(4)専門領域の条件

  1. 本会と専門学会との間で包括協定を結び、専門領域を決定する。なお、専門学会は理事会で選定する。
  2. 本会の中に理事会が認めた分科会を設立し、専門領域を決定する。

(5)専門鍼灸師の認定要件

  1. 専門領域の学会との連携によって決定された条件、及び分科会で決定された条件を満たしていること。
  2. 本会に5年以上所属していること。

(6)専門鍼灸師の認定

認定委員会の審査を経て、理事会で承認し、会長が認定する。

(7)専門鍼灸師の更新

  1. 専門鍼灸師の認定期間は5年間とする。なお、認定鍼灸師の資格を消失した場合は、同時に専門鍼灸師の資格も消失する。
  2. 更新を希望する場合は、専門領域の学会との連携によって決定された条件、及び分科会で決定された条件を満たしていること。
  3. 専門鍼灸師更新申請書を認定委員会に提出する。

(8)費用

専門鍼灸師登録料は3千円とする。また、更新料は3千円とする。

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