COVID-19 に関する鍼灸論⽂の紹介 2021年度版

2021年7月12日

COVID-19に関する鍼灸論文の紹介(2021年7月)

(公社)全日本鍼灸学会

 2020年8月31日、それまでに公開されたCOVID-19に関する鍼灸論文をWebで紹介いたしました。今回約1年ぶりにそのフォローアップ検索を行いました。今回は、意見や解説だけのものは排し、研究成果が記載されている論文に絞りました。あくまで海外の情報としてご覧いただければ幸いです。

2021 年 7 ⽉ 7⽇

COVID-19 に関する鍼灸論⽂の紹介 2021年度版

(公社)全⽇本鍼灸学会

【⽬的】
昨年8月に引き続き、COVID-19 に関する鍼灸に関する臨床研究論⽂を収集し紹介する。
【⽅法】
以下の⼿順で論⽂を収集し分類・要約した。ただし、前回の検索結果では、特に中国から①過去の文献や論文の成果をもとにCVOID-19に対しては鍼治療や灸治療は有用である(はずだ)といった解説論文、また、②RCTやsystematic review(SR)のprotocolを提示した論文が非常に多く、①については実際の治療成果ではなく、②については、SRのプロトコールであって結果を報告した論文ではないことから、これらの論文は今回の検索では採用しなかった。すなわち、症例報告、症例集積、実際に行われ結果を伴うRCT/SRに絞って収集した。

  1. データベース・・・PubMed, CENTRAL, Google Scholar, WHO COVID-19 Global Research Database
  2. 検索キーワード・・・COVID-19, acupuncture, moxibustion, RCT, systematic review, case, patient, case series
  3. 検索⽇・・・2021年6⽉20⽇
  4. 検索の制限・・・⾔語による制限なし
  5. 組み入れ基準・・・前回調査以降に掲載された論文(2020年9月以降)
  6. 除外基準・・・実際の臨床または研究の結果が記載されていない論文、すなわち、systematic review以外のレビュー論文や解説論文、RCT/systematic review/meta-analysisのprotocol

【結果と総括】
1)11編の論文が抽出された。システマティックレビュー3編、RCT2編、観察研究2編、症例報告3編、ニュースレター1編であった。国別では、中国6編、台湾1編、米国2編、ブラジル1編、イラン1編であった。前回調査同様、今回の調査でも特に中国からのシステマティックレビューのプロトコール論文が多数みられたものの、少なくとも現在までは全く出版されていなかった。言語では英語論文8編、中国語論文(英文要旨付き)3編であった。
2)内容に関する特徴としては、SARS-CoV-2の非常に強い感染性を踏まえて、遠隔医療に関する論文が2編あった。すなわち、オンラインでツボを指示してセルフでツボ指圧、あるいは灸を行っていた。RCT2編は、灸(百笑灸)と耳穴貼付療法であった。症例報告は中国武漢、台湾、米国の症例であったが、特に米国の症例では麻酔科医が自身で吸角/鍼治療を行っていて興味深かった。
 現在、ワクチン接種によって世界的にも特に高齢者の入院や重症化が抑えられつつあるが、残念ながらCOVID-19に対する決定的な治療法、治療薬はまだ見出されていない。日本では、調べたかぎりは鍼灸を用いた症例報告も観察研究もないが、鍼灸は付加的療法として試みて良いかも知れない。ただし、治療者−患者の相互感染を防ぐために、例えば遠隔治療やセルフによる治療などの適切な治療形態を考える必要がある。
 また、最近はCOVID-19後遺症(long COVID)が新たな問題になってきている。現在のところlong COVIDに対する鍼灸の成果に関する論文は抽出されなかったが、鍼灸はこの病態に貢献できる可能性は大いにあると思われる。

【おわりに】
今回は、結果の出ている論文に絞って紹介した。抽出された症例報告や症例集積ではそれぞれに工夫された治療がなされているが、我が国でそのまま応用できるものではないかもしれない。あくまで海外のCOVID-19に関する情報を伝えることに主眼をおいたということでご理解いただければ幸いである。

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